Pict-Labという新しい取り組みを始めました。
私たちカメラマンが日々向き合っている光の特性、私たちは業務上なんとなく感覚としてこうすればこうなるはず!という感覚で認識しているのではないでしょうか?実際に多くのレクチャーやセミナー系の情報でも、その仕組みや実体よりも、こうするとこうなるという最初と最後のセットアップとその結果だけを教えている情報が殆どです。また、学習した環境や師事した師匠によって用いられる言葉の定義やそのニュアンス、用法が曖昧なことが多く、誤解を招く情報、明確に誤ったものも散見されます。ある人はライトを近づけると光が柔らかくなると言い、ある人はライトを離すと柔らかいという人もいます。シェイドとシャドーを区別する人も多いですがその因果関係を正しく理解できていない人も多いです。そもそも人によって柔らかい光の定義が曖昧なため、柔らかい光と柔らかい雰囲気の写真の違いが混ぜて語られていることが多いです。
今回のライティングの物理学という学びでは単純なHow?の目線で「ライティングのこうセットすればこういうのが撮れる」ということは全く取り扱いません。HowよりもWhyを重視し、なぜそうなったのか?を突き詰め、光の本質である物理学の視点から細かい光の挙動を考察し、原因と結果を細かく切り分けそれぞれの因果関係を結びつけます。そもそも柔らかい光という表現を全否定して、もっと具体的な光と影の表情を評価できるようになることを目指します。
そのために、まずは我々が普段から向き合っている光とは一体どんな存在なのか考えてみましょう。
光子という粒として光を考える。全てはここから始まります。
この光の粒には明るいも暗いも、硬いも柔らかいもなく、基本的には力尽きて弱まったりもせず、遮られなければ消えることもなく永遠に真っすぐ飛びます。(後述しますが、周波数という持っているエネルギーは粒により様々です。)この大前提に対して、見た目上の光のイメージとの差に疑問を持ち、これから始まる光子の旅路を想像してみましょう。
スタジオで200wのLEDライトをフル発光させてみたとしましょう。
その際、このヘッドからは220垓個の光子の粒が毎秒飛び出していくと言われています。これは宇宙の星の数を超えるような狂気的な数です。そしてそのほとんどが、被写体に届く前に「機材と空間に無慈悲により淘汰」されています。
ベアバルブ(裸)なら全方位に飛ぶはずの220垓個の光子を、リフレクターによって前方に絞り込みます。
アルミ銀面リフレクターの反射率は約85%〜90%です。内壁に激突した光子のうち、約10〜15%はリフレクターの金属に物理的に捕獲(吸収)され、一瞬で熱に化けます。
リフレクターを脱出できた光子:約 180垓個 / 秒
ここが「距離」による淘汰の本領発揮です。
リフレクターを脱出した180垓個の光子は、照射角(例えば60度)のコーン状に広がりながら直進します。2m先まで進むと、光の円の面積は約4㎡にまで巨大化(希釈)します。
ここに置かれたダビデ像(仮に高さ50cmの中型サイズ)の面積は、せいぜい0.15㎡ほどです。
空間的なヒット率: 0.15㎡÷4㎡≈ わずか 3.7%
ダビデ像に着弾する光子:約 6.6垓個 / 秒(約660京個)
【ここがポイント!】
残りの**96.3%(約173垓個)**の光子は、ダビデ像の横をただ虚しく通り過ぎ、スタジオの背景や壁に向かって突き進みます。これが、白壁にぶつかってリサイクルされるとレフ板効果になり、黒カポックに吸わせると「強制遮断」され熱に化けます。
ダビデ像(白い石膏)の反射率を約80%とします。
着弾した660京個の光子のうち、20%(132京個)は石膏の内部の分子に捕獲され、ダビデ像をミリ単位で温める熱になります。
残りの80%が、石膏の表面の凹凸によって、再び全方位へとカオスに弾き返されます。
ダビデ像から跳ね返った光子(拡散光):約 528京(けい)個 / 秒
ここがカメラマンにとっての最終収穫地点です。
ダビデ像から半球状に四方八方へ飛び散った528京個の光子のうち、カメラのレンズ(例えば2m離れた位置にある50mm F2.8レンズ、有効口径約1.8cm)の小さな穴に、たまたま飛び込める確率は「約10万分の1」しかありません。
レンズを通過してセンサーに届く光子:約 52兆個 / 秒
奇跡の1枚(シャッタースピード 1/125秒の世界)
カメラマンがシャッターを1/125秒で切ったとき、センサーが捕まえる光子の総数は約4160億個になります。
これを2400万画素(24MP)のセンサーで均等に割ると、「1画素あたり、約1万7千個の光子」が着弾している計算になります。デジタルカメラのセンサーとしては、ノイズ(ざらつき)を完全にねじ伏せて、極上のグラデーションを描くのに最も美しくリッチな光子量です。
す。
そして、これらの膨大の数の光子の粒がすべて無事に被写体に飛び込み、さらにそれが目やセンサーに対して反射した粒の数の密度を我々は明るさとか光の強弱と呼んでいるのです。
まずは光の強さ=粒の数・密度だということをインプットしましょう。
そして、いかにして光が不要な角度に捨てられているかという事実を意識しましょう。また、光の挙動で頭が混乱した際はここで話した
①直進性
②個別には明暗の差はない
③力尽きて空中で消えたりしない
④大量の粒である。
⑤明るさとは到達した光子の粒の数
これを踏まえたうえで俗に言われる硬い光とは?柔らかい光とは?またそれらを形作る要因を切り分けていきましょう。
光が柔らかいか否か、それを評価するうえで何を見るべきか?まずは光と影の表情を解剖します。
今回は光と陰影の評価軸として以下の4点を基本基軸として扱います。
①質感(光の質による画像の精鋭度)
②配光の平滑性(明暗差。陰影とは区別されます)
③陰影の境界のグラデーション
④陰影の濃度
※順光とか逆光とかそういった照射角度などの基軸は撮影上のテクニックであると解釈して今回は度外視しており、あくまで光子の挙動の特性という範囲に限定しています。(中級編で言及予定となっています)
単なる柔らかい光、硬い光という曖昧な表現ではなく、これらの具体的な光と陰影の具体的な要素を区別して認識するようにしましょう。
そして、これからそれらのパラメータを変化させる方法について考察していきます。
その前に、これから光の挙動、ライティングの評価を行う上で世間一般的にも混同されたり誤解されたりしている事象について、きちんと定義づけを行います。曖昧な表現を避け、因果関係の切り分けを行う準備をしましょう。正しい理解を深めるための前提知識となります。
多くの一般的な情報ではライティングにおいて画面上の暗部を一括りにして陰影と呼ぶことがあります。しかし、厳密には陰影とは物理的遮蔽によって光源からの光が入射しない事によって明暗差が起こっている現象(その暗部が被写体の外に落ちていることをシャドー:影、被写体自体に発生している暗部をシェイド:陰と定義されていますが、どちらも物理現象としては同じ事象です)一方物理的に光源から遮蔽されていないにも関わらず明暗差が起きている現象(距離減衰・配光特性などと表現)があり、それは陰影とは全く別の事象として扱われるべきです。
光源という言葉にはストロボやLED本体を意味して表現されることが多いですが、一部のライティングセットアップにおいて単純に光源を被写体から離すといった表現は多くの誤解を招きかねません。(枠トレなど)そのため光子を自ら発生させている光源を1次光源と呼称し、そこから照射された光子を受け止めて実際に被写体を照らしている、被写体から見た光源を二次光源と区別します。これにより、より細分化された事象の切り分けが可能です。
よく使われる言葉「柔らかい光」「硬い光」多くの人は非言語的に理解していてもそれが具体的にどういう事象なのかを明示できません。また、柔らかい光と、柔らかい雰囲気の写真、明るい写真、陰影の少ない写真、これらは混同されることが多いかもしれません。先述の4つの評価機軸、どれがどうなると柔らかい光と呼ぶに適切かどうかを考えてみましょう。
では、先述の4つの評価軸に対して、原因要素となるどのような挙動がそれぞれの評価軸を決定づけているかを考察していきましょう。
晴れた日に直射日光の下で撮影した肌と、部屋に入ってレースのカーテンが垂れている窓辺で撮影した時で、同じ人同じ太陽光での撮影でも肌の質感が異なる経験をした事がありませんか?これはミクロな視点で肌の凹凸に対して様々な角度の光が隅々まで光が照射され、小さな陰をどこまで潰しているか、言い換えれば光子の方向性の散乱強度によって起こる事象です。(一般的にマイクロコントラストと呼ばれています。)=散乱強度
ライトを照らした際に近くにいる人は明るく、遠くにいる人は暗くなることは想像に容易いでしょう。また、ライトを当てても、最も明るい中心箇所から外側に行けば行くほど暗くなることも想像が容易いと思います。画像で見たら画面上での配光がフラットなのか、明暗差が激しい写真かの評価ですが、この際、X軸要素とy軸要素のように切り分けられる2種類の事象が起こっています。=①距離による減衰による明暗差②光源側の配光バランスによる明暗差。この二つを切り分けて認識する事がとても重要です。
光源が完全なる点光源の場合、遮蔽物によって光が入射するか否かの境界は0か100かでしかありません。しかし、光源がディフューザー等で面光源となった場合、本来は暗部だった部分にも光が照射される期待度が上がります。つまり、画像上で光が遮蔽されかねない地点に対し、入射する事が出来る光の発射地点を増やしていく事により陰影の境界のグラデーションをなだらかに出来ます。=二次光源の拡張と縮小
被写体と二次光源の間が完全に物理的に遮蔽されていても、撮影環境の構成により環境に飛散した光子が副次的に反射して、結果的に陰影部に入射させることが可能です。それにより陰影全体の濃度を薄めることが出来ます。=副次的反射
つまり、現場的な要因(操作選択する要素)として特定するなら、ライティングを構成する5つの要素とはこういう事になります。
素材→散乱強度→細部の質感の描写
形状→配光分布→明暗差
サイズ→入射角の多様化→半影の明瞭度
距離→距離的減衰→明暗差
環境構成→副次的反射→陰影の濃度
では、各5項目において光子の挙動を深堀りして行きながら、1つの疑問にたどり着きましょう。
ライティングと向き合った事がある方なら、必ずこの5項目の対応表を見たら(!?)が点灯しているはずです。
これは1次光源の光を受け止めて被写体に届ける2次光源におけるフィルター的な存在の質を意味します。
つまりディフューザーやアンブレラの素材、濃度や厚さ凹凸など、リフレクターの鏡面仕上げなど、光を受け止めて被写体に届ける際のベクトルの散乱や整列を決定づける要素となります。
例えば、同じサイズ、形状のアンブレラでもシルバーの素材か白の素材であるかによって、内壁にあたった際の光子散乱の乱雑さが大きく異なってくるということです。ちなみに、光子1粒のサイズをピンポン玉に見立てた場合、例えば一般的な斜幕ディフューザー内の最小単位の繊維は直径6mの円柱位のサイズと言われています。この直径六メートルの樹が生い茂るジャングルのような空間を光子は反射したり、透過しながら指向性を狂わされ2次光源としてベクトルを乱され、淘汰されながら被写体に向かいます。この散乱強度=細部の質感の描写というのが、素材としての直射日光(散乱度超低い)とレースのカーテンの窓辺での写真の肌の質感の精細さの違いという現象として現れます。
先述の素材がミクロな視点での光子一粒あたりの指向性の乱れや整流を司るものだったのに対し、形状は全体的な光子の照射範囲を大きく制限したり、その範囲内での光子の密度の分布などをコントロールするものとなります。
アンブレラであれば、深型のパラボリックアンブレラと浅形の一般的なアンブレラといった種類の違いにより、たとえ素材とサイズが同一であっても配光の特性が大きく変わります。同様にリフレクターにも深さがあり、光子の照射範囲や集束の加減が大きく異なります。広範囲に照射するための形状の機材や、光子の射出角を制限し、集束させるための形状。機材によって一次光源と二次光源の距離や位置関係も様々でありそれぞれの設計思想によって用途が異なってきます。
また、照射範囲に対して均一に光子を配光するものや、あえて減衰を大きくしてグラデーションを作るものもあります。
これらの配光分布による明暗差を軸断面明暗差と呼称します。
一次光源からの点光源を二次光源であるディフューザーやアンブレラなどが受け止めて、透過や拡散、乱反射を起こすことで被写体に対して、様々な角度から光子が照射されることになります。そのため、二次光源のサイズが大きくなり、そこに広範囲に一次光源からの光子が入射すればするほど陰影の境界がなだらかに曖昧になっていくためグラデーションが起こり、陰影が縮小していきます。後述しますが、厳密に言うとここでは実際のサイズではなく、被写体から見た相対的なサイズが本質であり、大切なのは入射角の多様性で、物理的に大きい小さいかどうかではありません。
ライトと被写体の距離が近ければ近いほど、撮影画角内におけるライトとの距離による明暗差が激しくなります。逆に、光源から遠くから照射される状態では画角内での光源との距離の違いによる明暗差は軽減されます。被写体に対して2次光源を近づけると背景が暗くなるという現象はこのためです。点光源に関しては距離が離れるにつれて逆二乗的に光子の量が離れていくという法則があります。カラースプレー缶を放射した際に、スプレーの近くでは粒子の密度が高いのに、離すうちに粒子の密度が落ちていく現象をイメージしてください。この距離減衰による明暗差を光軸上明暗差と定義します。
※2次光源を近くしたら陰影の明瞭度が柔らかくなるのでは?という疑問が生じると思います。後程考察していきましょう。
先述の光子の淘汰の過程において、殆どの光子たちが被写体やカメラのセンサーにたどり着くことなく、離脱していくことを述べました。それらの光子はどうなるでしょう?環境の構成によっては白い壁や天井で反射され、再び被写体のもとに飛んで来るものもありますし、黒い部屋や屋外であれば暗い夜空に消えていったり、黒の壁面に吸収されていくこともあります。また、それらを計画的に構築したものの最たる物がレフ板となります。しかし、意図して設置していてもいなくても、光子は空中で途中で消えたりしないため、天井や壁などの空間に吸収されたり反射したり、つまり副次的に反射するか否かの状況は常に起こっているわけです。また、それらの副次的反射は面光源の拡大でもカバーできない本影(完全な陰影を本影、グラデーション部分を半影と一般的に呼びます。)の濃度を薄めたり濃ゆくしたりします。その際に計画的に環境を構築することで半影のグラデーションは変化することなく濃度だけをコントロールする事も可能です。
柔らかい光?硬い光?曖昧な表現を避けて、細かい事象に切り分けた光の表情とそれを操作するためのパラメータについて考えてきました。
でも、なんとなく納得がいかない、なにかしらの疑問を持ったならそれが正解です。
ただ決してこの因果関係が間違っているわけではないのですが、
これらの因果関係は必ずしも一対一で対応している訳ではないということです。
ただ、各因子が他のパラメータにも作用していると言うよりは、各因子は独自の特性とは別に、副作用的に別の要素に対して干渉する係数として働く側面があり、バフ・デバフのような作用を与え合う関係性を持っています。
それでは、複雑に絡み合う5大要素とその結果の現象を分析していきましょう。
5つの要素が別の各要素に係数的な干渉をし合っている。。。その組み合わせや相互作用を全て暗記するのではなく、現場の状況に応じてそれを考えて答えを出して対応する。そのためにライティングの物理学という視点は存在します。
最も分かりやすい「距離」が他の要素に及ぼす影響を例にして、光子の挙動を意識しながら考えてみましょう。
事例:距離を離すことの意味
まずは単純に距離を離すことの意味、具体的に何が起こっているかを考えてみましょう。言葉として捉えやすいため距離減衰という言葉を用いましたが、実際には光子は出力が減衰したりするわけではないため、本来は別の事象として捉えることが必要です。実際には光子の量の希釈、淘汰、散逸といった表現が厳密となります。離れれば離れるほど、二次光源から直線的に被写体に向かって飛ぶ光子以外は徐々に離脱していくところを想像してみて下さい。つまり、離れた距離の光源から被写体にたどり着いた光、その際、光子のベクトルは整列して直線的になっているという現象が起こっています。離れれば離れるほど露出が落ちる事は理解しやすいですが、同時にベクトルは整列し、直線的な光になっている。つまり、距離とは光子にとってベクトルを淘汰(整列に向かって選別する)するための『サバイバルコースの長さ』です。ここを理解すると、距離を離したり近づけたりする事が他の要素にどう影響を及ぼすかが理解しやすくなります。
距離→素材への影響
素材は光子一粒一粒の散乱度を決める要素でした、どんなに分厚いディフューザーで光子を撹拌して指向性を散乱させても、被写体が離れれば離れるほど、たまたま真っ直ぐ被写体に向いて放射された光子だけしかたどり着くことが出来ません。二次光源の散乱度を最大化するためには被写体に近づけることが効果的となります。
距離→形状への影響
形状は配光分布を決める要素でした。例えば、集束系のリフレクターやスヌートを使用して、わざとスポットライトのように局所的に光を当てようとしているとします。。光源を離すと、画角内の明暗差はどんどん落差がなくなり、平滑になっていきます。逆に拡散系の形状であるアンブレラを使用して人物を撮影したいと思った際、近づけば近づけるほど、照射範囲が狭まってくることをが観察できるでしょう。集束系のポテンシャルを最大限にするためには距離を近づけ、拡散系の効果を最大化するためには距離を離す。このような係数的な影響を与えます。
距離→サイズへの影響
サイズと距離は一般的に混同されがちな要素です。特に面を持った二次光源を被写体に近づけると実際に半影の明瞭度は下がり、グラデーションがなだらかになります。それで、距離を近づけると光が柔らかくなる。その結果だけを切り取ったような誤解を招きやすいですが、極小の点光源を動かして被写体の近くや遠くに移動させて比較しても、半影の状態は全く変わりません。つまり、ここでも距離の変更は距離の直接的効果という訳ではなく、元来のサイズという要素の効果を最大化したり打ち消したりする係数として関与します。他の複合的干渉と絡み合い、距離を近づけると形状への影響で配光分布による明暗差も顕著になり、距離減衰による明暗差も強くなるがサイズへの影響として面光源の大きさを最大化して半影のグラデーションをなだらかにすることが出来るという事です。
距離→環境構成への影響
レフ板が効きにくいな?と感じたことはないでしょうか?先述の距離減衰の特性の中で、二次光源が近づけば近づくほど離れた場所はいっそう暗くなると言う通り、被写体の近くから照射された光はレフ板にも到達しにくくなります。逆に、遠くから照射した光では同じ位置にレフ板がおいてある場合はレフ板による副次的反射も強くなります。また同様にレフ板だけでなく、(例えばこのスタジオのような白い空間の場合を想定すると分かりやすい)空間内の天井や壁面による副次反射もまた、被写体から離れれば離れるほど、起こりやすくなります。
今回、距離を一例として相互干渉の作用を考えてきましたが、まずはそれぞれの五大要素がもつ直接的な作用と、他の四つの要素のポテンシャルを係数的に最大化したり打ち消したりする効果があるという事になります。もう少し業務上起こりえる複合的干渉を一例として考えていきましょう。
形状×サイズ
ここでいう形状とは単に形だけでなく、設計上の仕様により一次光源と二次光源の距離を指します。この一次光源と二次光源の距離は五大要素の距離とは似て非なるもので、サイズと密接に関係します。あまりにもソフトボックスの中でディフューザーとソフトボックスが近接していたらどうなるでしょうか?そのソフトボックスがどんなに大きなディフューザーを有していても、あまりにも近い一次光源ではその広大な面光源を有効活用できません。しかし、これを有効に活用したセットアップもあります。商品撮影で多用される枠トレ+リフレクターなどのセットアップはこの概念を活用しおり、広大なディフューザーを意図的に全面活用せずに配光分布という軸においてわざと周辺減光を起こし、グラデーションのある光の演出を行うこともあります。
距離以外の要素の干渉に関して例を考えてみましょう
素材×サイズ
同じくサイズの大きなディフューザーを使用していても、そのディフューザーの散乱度が極端に低かったとしたら、事実上そのディフューザーは大きな面光源として成立できない事になります。
形状×素材
ソフトボックスの光と、アンブレラの光。この違いを言語的に明確に説明できるでしょうか?アンブレラはその形状の特性として『照射範囲』という観点で光を拡散させますが素材としての散乱度は「1回のバウンス」です。逆にソフトボックスは形状としてはリフレクターのような形状つまり拡散を遮るような形状をしています。しかし、ディフューザーによって何度も何度も拡散した光子は派手に散乱して放射されます。ミクロな視点(素材)はそこそこの散乱でマクロな視点(形状)では派手に拡散する配光分布のアンブレラと、その全く逆のプロセスで光を放射するソフトボックス。光子の挙動を粒としてイメージすると、普段使っている機材のたたき出す陰影の表情と辻褄があうのではないでしょうか?
他にもたくさんの相互干渉が起こっており、だから私たちは光と向き合う際に苦悩して苦労します。すべての組み合わせを考えて暗記することも出来ますが頭が爆発しますきっと、それよりも重要な事はイメージする事。そのために、光の挙動を光子の粒として認識し、直進性や非減衰性などのここまでに考えた物理学に則した特性に沿って頭の中でシミュレーションする事が、光を正しく認識する上で一番大事な事です。
そして、5大要素とか半影とか濃度とかいろいろ考えましたが
っていう事を頭に置きましょう。光子それ自体が柔らかくなったり、鋭くなったりするという挙動は全くなく、単にベクトルを整列させるか散乱させるかだけであって、そのためのプロセスをいろんなアプローチで行うのが五大要素です。
これらを頭に入れるだけで、普段の業務の光に対する認識が格段に上がるはずです。まずはこの世界に足を踏み入れて、光を粒として想像していきましょう。
今回の学びでは、五大要素としてライティングを構成する因子を取り上げましたが、もうちょっと踏み込めば、もっと深い光の特性が見えてきます。
今後はもうちょっと踏み込んだこのような概念を取り上げます。
実務上のノウハウとは少しかけ離れた内容も多くなりますが、このあたりを考えると高いライトやストロボがなぜあそこまで高額なのかとか、そういう話に収束する予定です。
長い長い長文を最後までご覧いただきありがとうございました。