カメラマンと
カラーマネジメント
-初級編-
Pict-Labという新しい取り組みを始めました。
-初級編-
カメラマンは色を正しく扱う必要がある仕事ではありますが、なぜか苦手意識を抱いているカメラマンが多いのが現実のところ。。。
しかし、同時に印刷や出版の業務に関る中でヒヤッと焦ってしまうような刷り上がりを見た経験や、モヤモヤする想いをした事がある方も多いのではないでしょうか。
カラーマネジメントは本当に難解ですから、すべてをくまなく理解する事は非常に深い理解を必要とします。我々カメラマンとしてかかわる分野の概要・そして多職種にバトンを渡す際の作法や気遣いなど、カメラマンとカラーマネジメントの向き合い方を考えてみましょう。
カメラマンにとってカラーマネジメント、そして撮影と納品とは。。
これらを正しい翻訳作業で引き継いでいく事です。
そして、それらの引継ぎの際には、全く違う言語でそれぞれの色が定義されるため、正しい翻訳辞書や物差しが必要になる。また言語ごとの作法のようなものもあるため、我々はそれらをうまく引き継いで正しい色のコミュニケーションを行える作業を行う必要があるのです。
上記のワークフロー図は実際のカメラマンの撮影から納品に至るカラーマネジメントの関わり方を示していますが、いくつかの要因と罠によって我々の理解は非常に巧妙に阻まれています。まずはそれらを紐解いていきましょう。
現在、我々が使用するカメラマンにまつわる機材、その多くの入手しやすい物、カメラやモニターの殆どは商業的な魅力を訴求するために基本的に「正しい色」よりも「キレイに見える」事を優先して開発されています。つまり、我々カメラマンのようなコンテンツの作り手ではなく、コンテンツ消費者目線で魅力的な商品としての特性が強いという事です。
これはカメラメーカーの色に対する姿勢を否定するものではなく、美しく世界を捉えること自体は間違った事ではありません。むしろ、この色の翻訳に対するスタンスこそが(カラーサイエンス)各メーカーの色に対する哲学の本質であり、カメラメーカーの特色とも言えます。ただ、業務として写真を撮影する場合は「より美しく」表現する事が大事な現場もありますし、「正しい色」を正しく出力する事が重要な場合も多くあるので、それらのメーカー側のスタンスを理解したうえで、正しく機材を使い分ける必要があります。
同様にモニターに関しても「正しい色」よりも「より美しく、より明るく、より印象的に」見えるモニターが民生品は殆どです。カメラと違い、カメラマンが用いるモニターは「記憶色」の現場であっても「記録色」の現場であっても、カメラマンの現像時に見えている色と、納品後の(紙出力であってもWeb閲覧でも)ユーザーが見る色が同一であることが理想的であるため、カメラマンのカラーマネジメントとの関りにおいてとても重要な設備投資となり得ます。
まずは、「キレイな色」を作る前提として根本的にまずは「正しい色」をスタートに据えることが重要なのです。
もう一つの理解を妨げる要因に、カラーマネジメントを語るうえで頻繁に出てくる「プロファイル」という言葉があります。先述の通り、カラーマネジメントにおける各フェイズによって扱う言語が異なるから正しく翻訳する必要があるという事に触れましたが、その言語に相当するのが「プロファイル」であり、①カメラの中のプロファイル②現像ソフトでRawを展開する際のプロファイル③現像ソフトで編集作業を行う際のプロファイル④モニターの表示能力や表示特性を司るプロファイル⑤納品画像の特性を表す名札のような役割のプロファイル。同じようなプロファイルというワードが各所で違う機材の中で似た様な言葉で使われるため、非常に混乱を招きやすいのです。
では、そのプロファイル=色の翻訳の過程を辿りながらカメラマンのワークフローにおけるカラーマネジメントの流れを考えてみましょう。
〇カメラ内臓プロファイル
カメラメーカーによって名称が異なりますが(Nikonならピクチャーコントロール、FUJIFILMならフィルムシュミレーションなど)カメラ内部で、現実世界の色をデジタル信号の色として解釈させるための翻訳フェイズです。これが先述の通りメーカー毎の色となり、また数種類のプリセットがカメラに内蔵されていたり、ユーザーが自身でカスタマイズしたり、個性として表れる事になります。ちなみに、Rawデータ自体はこのメーカー毎のカメラプロファイルからの影響を全く受けていない状態でデータとして生成されています。
〇RAW展開時のプロファイル
例えばAdobeCameraRawでRawデータを展開する際、その翻訳作業のプロファイルはカメラメーカーの(カメラ内臓されたプロファイル)ものとは同一の変換は行われません。先述の通り、カメラプロファイルはカメラメーカーが自社の秘伝のタレとして作りこんだ色の哲学だからです。それで、CamerarawやLightroom 、CaptureONEなどは独自にカメラ毎のRaw展開用プロファイルを各種作成し、ユーザーの利便性を高めているのです。色を求めるならカメラメーカー純正現像ソフトがいいとか、Captureoneは色が美しいと言われるのはこのカラーサイエンスの差による色変換の違いでもあるのです。ちなみにAdobeではメーカーのプロファイルを模倣した同一名称のRaw展開プロファイルを各カメラモデルごとに準備しており、CCアップデートのたびに新機種が対応するアップデート情報が表示されるのは各新型カメラの内臓プロファイルの作成を行っているからなのかもしれませんね。
ちなみに、この入口のプロファイルは、記憶色や誇張表現を重要視する現場においてはスピード感を重視するためにも厳密に管理しなくても大丈夫という考え方もあります。
そして、同時にこのRAW展開時のプロファイルを自作する事こそが、カメラマンのカラーマネジメントにおける大切なステップとなるのです。
キャリブライトやデータカラー等が販売しているカラーチャートを用いることでCameraRawやLightroom等に、味付けされていない原色の展開用プロファイルを作成する事が出来ます。実際にはプロファイルを作成したいモデルのカメラでカラーチャートを撮影時にサンプル撮影しておき、現像時に専用のツールを使って、プロファイルを作成するという流れなのですが、光源の変化など光の色に係る変化があった場合は、都度サンプルを撮影する必要があり、現場進行のスムーズさに影響を来す恐れもあります。
弊社で運用しているキャリブライトのカラーチェッカーでは同一カメラモデルで二種類の光源で撮り分けた二種のサンプルデータを用いてプロファイルを作成するという新機能「デュアルルミナントプロファイル」機能が追加されており、原色再現性のある汎用性の高いプロファイルとして常用出来るようになりました。
これらの原色再現系プロファイルは厳密な色管理が求められる商品撮影の現場や、マルチカメラでの色の整合性が求められる複数カメラマンの関わるプロジェクトにおいて(多種多様なメーカー・モデルのカメラが混在していても)各データの色の整合性を合わせる事が出来るという意義もあります。
また、環境光が各種光源の種類が入り混じっていたり、色付きの壁に反射した光で適正なホワイトバランスやカラーバランスが目視で判断しにくい環境において、カラーチャート(絶対的に信頼できる色の基準)でサンプル撮影を行っておくだけで、現像時の明確なガイドラインとして適正な色再現を行うことが可能になります。
Raw展開時のプロファイルによって画像データとして成立したデータを編集する際には広大な作業空間としての「プロファイル」が存在します。これは私たちが意識し操作する余地のない部分ですが、例えばCameraRawなどではProPhotoRGBといわれる広大な色域を持った規格の中で画像を編集する事になっています。このプロファイルは現存するモニターでは完全に表示出来ない色も網羅(Rawデータの広域な色データを扱うためです。)しており、だからこそ実際にモニターの設定をきちんと行う必要もある訳です。
出口のプロファイルの適正運用において、大切な事は
①モニター側の覗き穴としてのプロファイルを適正に行う。
②現像ソフト側の出力ターゲットのプロファイル設定
この二つを適正に運用して正しい視聴環境で色評価する事となります。
これが最もカラーマネジメントにまつわる事故に直結するポイントであり、真っ先に改善すべき点です。
そもそもモニターが正しい色を表示出来ているのか?という話です。先述の通り、多くの民生用モニターはキレイに表示するために作られており、明るく映る事が至高であるような商品が殆どです。
しかし、紙に出力するための画像なのか、Webやデジタルデバイスなどの画面上での視聴を前提にしたものかによってそもそも基準となる白の色温度も、基準となる輝度も異なるため、たとえ高額な色評価モニターを使用していたとしても用途に応じて表示モード(モニタープロファイル)を作成し、それらを使い分けていなければ適正な色を視聴する事ができないのです。また、モニターの表示能力の性能も非常に重要です。sRGB100%表示可能とか、AdobeRGB97%対応。といった色域の表示能力は物理的にそのモニターの性能限界を示しており、AdobeRGBで納品を行いたいけど、モニターの表示能力はAdobeRGBの色域を存分に満たしていない。。。これは事故の元です。極端な言い方をすればモノクロのモニターでカラー写真の現像を行うようなもの。実はこれはモニタープロファイルの設定全体に言えることなのですが、正しく表示されていない色のモニターを使用して現像作業を進めると、間違ったままの適正値を適正と認知して現像されてしまうから非常に危険な事なのです。
使っているモニターや管理アプリケーションによって方法論は大きく異なるためやんわりした説明ですいません。。。
このような画像を見たことはないでしょうか?
画像の中の一番下地となる色のグラデーション、これが我々が色として認知できる可視領域のエリアを示しています。そしてその中の最も大きな三角形が先述の作業領域としてのProPhotoRGB(青)がカバーしている領域です。その中に2つの三角形と一つの歪な形状の六角形があると思いますが、大きなものがAdobeRGB(黄)一番小さな三角形がsRGB(緑)、そして歪な六角形の領域がCMYK(赤)これらの各種プロファイルのカバー領域をそれぞれ表現しています。納品する用途に応じてデータとして表現できる色が異なるため、現像ソフトの設定時に作業領域である広大なProPhotoRGBから最終出力の形式に合わせて色を限定して表示し、そのうえで現像作業を追い込む必要がある訳です。そして、そのターゲットの形式をどう使い分けて納品するべきか(ほとんどの場合は形式を指定されますが。。。)を正しく理解することも重要です。
印刷してみたら画面で見たよりもくすんで出力されているといった現場でよくあるトラブルはこの色域の守備範囲の違いによる要因が多いと言われています。つまり納品したsRGBでは表現できている部分でも、印刷する際にCMYKに変換すると表現できないエリアが正しく印刷できない、もしくは逆もあり得る事です。sRGBで納品するとこのような事が起こりえるという事です。
では、一般的な画像納品時のプロファイルの用途を考えてみましょう。
①sRGB
カバーする色域は狭いですが、既存の多くのモニターが表示能力としてカバーしているため汎用性に優れた形式であり、最も安全な形式と言われています。画像を納品する際に迷ったらこれ!と言っても過言ではありません。またWeb系の仕事でも標準的な形式と言えます。組み合わせるモニタープロファイルは納品用途に応じて使い分けましょう。
②AdobeRGB
色域がとても豊富でCMYKのカバー色域を包含しているため、出版や印刷系の納品画像としての適性があります。特に納品後DTPオペレーターや製版部門の方が画像を修正するワークフローを構えている出版社さんに対して豊富な色域で扱いやすい画像形式と言えます。また、学術的な意味でのアーカイブとしての側面がある場合なども適している用途とも言えます。しかし、先述の通り現像用モニターがAdobeRGBの色域を十分に表示できる能力を持っていなければ扱うべきではありません。非常に危険です。
③CMYK
japanColor2001Coatedなどに代表される印刷専用の出力形式です。一般のsRGBモニターやCMYKに対応していない表示ソフトウェアでは正しく表示できない事も多く、画像形式を理解していない方にこの形式で納品するのは危険で、製作サイドのスタッフ同士でのやり取りで授受を行うべきです。
他にもTVCM用素材としてのREC709や、Appleが推し進めているDisplayP3など多くのプロファイルが存在します。
カメラマンの多くはMacBookを使用している方も多いと思います。実はMacBookPROまたは最新のMacBookAirは、Appleが推奨するDisplayP3という色域に対応したモニターを採用しています。先ほどの色域チャートにこのDisplayP3を追加してみましょう。
オレンジのDisplayP3の守備範囲を見て分かるように、CMYKの色範囲をかなりの範囲で包含しています。P3は緑から青緑あたりの色表現が不足しているため、厳密さを求めるならAdobeRGB色域対応のモニターで色評価するべきですが、軽量且つ素性のいいモニターを搭載したノートPCという点ではかなり優秀な能力のモニターであることが分かります。しかし、先述の通りAdobeRGBの現像には同様に青から緑の色域に注意が必要です。
また、基本的にモニターの輝度調整や発色のセッティングが「キレイに魅せる」コンセプトで設計されているため幾つかの工夫が必要になっています。
MacbookPROかAirなどモデルによって行える設定が異なっているのですが、基本的に
①TrueToneをOFF
②輝度自動調整をOFF
そしてMacBookPROの場合は「リファレンスモード」という機能を用いて先述の印刷ORモニター視聴といったカスタムプリセットをセットする事が可能です。そもそもMacBookPROのモニターは素の品質が非常に高く、色表現の誤差が少ない良質なモニターであるとも言われています。また、キャリブライトやデータカラーといった外部色評価ツールを使ってモニターの校正を行うことも可能となっています。
事実としてEIZOColoredgeなどの色評価モニターは高額な機材ですので、誰もが持っているわけではないのも事実です。では手持ちの機材でどこまでカラーマネジメントに関わるトラブルを減らせるか。
「世に出ているモニターの多くはそれほど色がズレていない、しかし色評価するには明るすぎるモニターが殆どである」
という説があります。私もそのように感じます。事実カラマネ関係のトラブルの殆どの原因は過剰に明るいモニターに起因するとも言われています。
そこで、自身のモニターの適正な輝度をカメラマンならではの方法で計測する方法を試してみましょう。
①モニター上に(PhotoShopなどで)ホワイトベースを表示し全画面に展開する。
②カメラで露出設定をマニュアルモードにしてISO:100、F4、シャッタースピード1/60に設定して画角を全てモニターのホワイトベースで埋める。
③その際にTTLゲージが適正露出になるようにモニターの明るさを調整。
④TTLゲージ適正になったらそのモニターの明るさは120cd
※その際モニターに直接高輝度の反射が入り込まないようにしましょう。
初めてこれを行った方は殆どの方が「暗すぎない!?」と言われます。この画面の明るさを基準にして現像作業を行うようにしましょう。
また、撮影時においても「なんとなくホワイトバランス設定する」のを辞めるだけで色の管理が格段に向上します。Ginihchiなどで正しいグレーカードなどを入手する方法もお勧めですが、(キャリブライト等のカラーチェッカーツールは高額なので。。。)身近にあるもので適正なマニュアルホワイトバランスが取得できるものを覚えておきましょう。
✕コピー用紙・ティッシュ
〇MacBook等の『スペースグレイ』
〇カメラバッグの内部緩衝材
〇打ちっぱなしのコンクリート
これらはもしもの時の相対的基準として活用すると複雑な光源時の撮影などで救済の手立てとなるかもしれません。
明るすぎる太陽の下で現像をしたら適正な色評価が出来ない事は言うまでもありません。現像デスクの環境整備でより厳密さを求めるなら以下のようなチェックポイントを確認しましょう。
〇モニターに直接光源が入射しないようにする→モニターフード
〇環境光は4EV前後→露出計でEVを測定※けっこう暗いです
〇環境光の色温度はモニタープロファイルの白色点と同一に設定
〇モニター周辺に発色の強い物や光源を設置しない→youtuberのようなカラーバーライトはご法度
いずれにしても自身の環境で表示できないプロファイルを求められたら、断る勇気も必要。そして迷ったらsRGBです。
今回の学びではあまり触れませんでしたが、モニターの発色は日々経年劣化します。外部センサーを使用して定期的に色の確認と校正を行いましょう。弊社で相談に乗ることが可能です。
納品時、格納フォルダ名やファイル名にプロファイル名を記載すると事故が減ります。またreadme等のテキストファイルを添付し、納品先にプロファイル設定の意図などを伝えることで円滑な連携が可能となるでしょう。
今回は概要的な話だけを取り上げましたが、モニターの管理方法(キャリブレーション)やカメラプロファイルの製作・運用方法、また現像時における適正な色の管理方法やワークフローなどを中級編として模索、企画中です。
乞うご期待!!